Chapter 6:

Get Ur Freak On

さあ、お待ちかね、パーティの時間だ。ショウの始まりだ。
セックスの匂いと、はちきれんばかりの期待。
ダンス・フロアには、ありとあらゆる欲望が充満している。
グラスの準備はいいか?相手はいるか?ブッ飛ぶ用意はいいか?
キラキラと輝くミラー・ボールがすべてを祝福している。
これまで押し殺してきた、すべての欲望を解放する時間だ。
ここに集めたのは、そんな愛と笑いの夜のサウンドトラックだ。
あのフロアの熱狂を思い出したいなら、スロットル・インすればいい。
まだ夜は終わらない。ゲッチャ・フリーク・オン!!

The Rapture
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The Rapture

Echoes (ViRTIGO / ユニバーサル)
The Rapture - Echoes

2004年2月にラプチャーは、本作『エコーズ』のキーとなる1曲『ラヴ・イズ・オール』をシングルとしてリリースしている。だが、これは本作収録のものとは別テイク。しかも、本作のプロデューサーであり、義兄弟関係にあるジェームズ・マーフィー&ティム・コールズワージーからなる(OFA)の手を離れ、U2や初期✕TCとの仕事で知られるスティーヴ・リリーホワイトと共にこの曲をリメイクしているのだ。演奏はほぼ一発録り。ロキシー・ミュージックのアンデイ・マッケイそっくりのフリーキーなサックスも聴きものだが、何よりも楽曲全体がメロディとコーラスを強調した極めてポップな仕上がりだという点にこそ注目すべきだろう。ある意味、かなり笑える。レコーディングの時期からすると、本作から実に2年ぶりのその音源は、ポストバンク・リヴァイヴァル云々という彼らに対する怠情な評価を見事にはみ出している。だが、本作とて、それは同じ。勿論、PIL以外の何ものでもない“エコーズ” のようなナンバーもあるにはあるが、アルバム全体としては、ポストパンクは単なる一要素でしかない。ロスの郊外育ちがゆえの徹底したポップ志向と、90年代初頭に袂を分かった英国のアシッド・ハウスと米国のローカル・インディとのミッシング・リンクを自分達の作品の中に見出そうとするジェームズ・マーフィーの意図が複雑に絡みあった、とても重層的な作品だ。ただ、いずれにせよ、どの曲もメロディありき。時間が経つに従って、彼らが生粋のガレージ・バンドであり、グラム・バンドであり、ダンス・バンドであるという本質が見えてくる最高のポップ・アルバムだ。

BEST TRACKS

  • M2. Heaven
  • M3. Open Up Your Heart
  • M4. I Need Your Love
  • M6. House of Jealous Lovers
  • M7. Echoes
  • M9. Sister Savior
  • M10. Love Is All

2003〜4年を代表するディスコ・パンク・アンセム“ハウス・オブ・ジェラス・ラヴァーズ”をシングルとしてリリースすることを、当初、メンバーは躊躇していたという。あんなに名曲なのに。それにしても、ルーク・ジェナーの独創的すぎる髪型と並んで、彼らの作品のレーベルやジャケットの隅っこに必ずついている、まこと虫のようなトレードマークほどラプチャーの本質を的確に表したものはない。しょぼくて、マヌケで、情けなくて、だからこそ、愛さずにはいられない。まさにラプチャー。アルバム屈指のバラッド、“オーブン・アップ・ユア・ハード”のリズムが、デヴィッド・ボウイの『ジギー・スターダスト』収録曲、“5イヤーズ”の引用なのは、おそらく熱烈なボウイ・フリークでもあるジェームズ・マーフィーのアイデア。

183

BACK DROP BOMB

Nipsong (トイズファクトリー)
BACK DROP BOMB - Nipsong

10代後半の多感な時期を90年代初頭の東京で過ごし、つるんでいた連中とバンドを組んで、皮膚感覚の赴くままに音楽を作ったとしたら、誰もがバック・ドロップ・ボム(以下、BDB)のような音楽をやっているに違いない。と思うのだけど、何故そうならないのだろう。彼らの、スラッシュ・メタル、ダンスホール、ロック、ヒップホップ、スカ、ボサノヴァ、レイヴ、ハードコア、ハウス──ありとあらゆる音楽の要素が1曲の中に混在したスタイルというのは、ある意味、すごくまっとうだと思うのだけど、皆、あんまり音楽に興味ないのかな?
BDBの音楽からは、日本が世界に誇る音楽文化の豊かさ、そして、そうした土壌に育まれたシャープなリスナー感覚が透けて見える。例えば、かつて彼らが共演を果たしてきた311に代表される欧米のミクスチャー・バンドが、異なる人種が同じ場所に暮らす多文化的な磁場を背景に生まれてきたとすれば、彼らBDBの音楽は、世界中のどの国よりも各国の先鋭的なアンダーグラウンド音楽が支持され、世界中のヒップホップのトラックメイカーがレア盤をディグしまくる、どこよりも豊富なレコードとCDが集まるポップ・ミュージックの総合基地、渋谷宇田川町を擁する、日本という特異な文化的磁場を背景にしている。BDBは、日本、そして、東京だからこそ生まれてきたマルチカルチャル・ハイブリッド・ミュータントだ。
この2ndアルバムのタイトル──『ニップソング』は、歌メ口ばかりを重視する、郊外の田舎者向けの安上がりポップが氾温するシーンに対する皮肉であると同時に、英詞の、しかも、サウンド重視の自分達の楽曲を「ソング」と呼ぶことで、自らを育んできた「日本の豊かな洋楽文化」をリプリゼントする言葉だ。ポップ・ミュージックの歴史が、意識的な強奪と搾取による創造的な勘違いの歴史だとすれば、本作品の、いくつものリフが次から次へとカット&ペーストされていく驚愕の高密度濃縮サウンドは、まさにポップの歴史そのものだ。1stアルバム『マイクロマキシマム』が、それまでのレパートリーをすらりと並べたオムニバス的作品だったとすれば、これはまるで21世紀初頭の東京に暮らす我々の皮膚感覚を、54分に凝縮した、生バンドによるミックスCD。この島に暮らすことの恩恵と受難の両方を、すべて呑み込んだまま幕進する、資本主義の彼岸ニッポンが誇るモダン・ロックの怪作だ。

BEST TRACKS

  • M2. Flip Out
  • M3. Mastadabestah
  • M7. Never Shined
  • M9. Remind Me
  • M12. Missin' The Point
  • M13. Nothin' Phony
  • M16. Perspective

インディからのミニ・アルバム『ザ・ニュー・サウス・ハンド・ブロウズ・アンド・ノース・キック・ブロウズ』(96年作品)以来の、やりたい放題のハイブリッド感覚がひとまずの完成を見たのが、99年の1stアルバム『マイクロマキシマム』。『ニップソング』に慣れた耳で聴くと、驚くほどシンプル。だが、それ以上に、耳から離れないキャッチーなサビに、改めて感嘆させられる。現在も重要なステージ・レパートリーがずらりと並ぶ。必携。

2ndアルバム『ニップソング』における、1曲の中に何曲分ものアイデアがぎっちぎちに詰まっているという過剰なスタイルの萌芽が見られるのが、2001年にリリースされた4曲入りEP「2254 UNIVERSAL EP」。たった4曲なのに、この密度。しかも、すべて名曲中の名曲。本誌2001年の年間べスト・シングル第4位。激必携。

2002年リリースのリミクス・アルバム『REFIXX』は、BDBの雑食性がそのまま反映されたかのような、そうそうたるリミキサーが揃っている。お馴染みDJ WATARAI、盟友チャーベくんのキュビズモ・グラフィコを筆頭に、KAGAMI、インコグニート、くるりの岸田繁&佐征史によるノイズ・マッカートニー、DJ光光光ことアイちゃん、サーストン・ムーア&ジム・オルークと、かなり豪華&支離派裂。中でも、マイティ・クラウンによる完全ダンスホール仕様になった“バック・アンド・フォース/ネヴァー・トゥ・レイト”は、ばっちり。ブリストルが誇るレプリゼント・クルーのひとり、DJクラストによる“リマインド・ミー”のドラムンベースはベース・ラインをなぞっているだけで笑えます。

もはや次なる音楽的冒険へと踏みだした、2004年のEP 『diversiveaudio EP』では、ラプチャーのヘウイ・ヴァージョンのような生音とエレクトロニクスを組み合わせたポストパンク的展開、ドープなエレクトロ、フリーキーなハウスと、やりたい放題。

  • 184
    BACK DROP BOMB - Micromaximum
    Micromaximum / 1999 / トイズファクトリー
  • 185
    BACK DROP BOMB - 2254 Universal EP
    2254 Universal EP / 2001 / トイズファクトリー
188

Tim Deluxe

The Little Ginger Club Kid (Underwater / ビート)
Tim Deluxe - The Little Ginger Club Kid

英国中がセカンド・サマー・オブ・ラヴの大きなうねりの渦中にあった89年。“リトル・ジンジャー・クラブ・キッド”ことティム・デラックス少年は、弱冠13歳だった。ヒップホッブ好きの10歳年上の兄貴から音楽の楽しみを教わった少年は、海賊ラジオから流れるデリック・メイの“ストリングス・オブ・ライフ”を偶然耳にしてハウス・ミュージックに心奪われ、学校を飛び出しレコード店で働き始める──そう、少年時代のポートレイトをあしらったジャケットからも明らかだが、本作は、英国の若手DJの筆頭株であり、ダレン・エマ1ソンの盟友、ティム・デラックスが、この10数年間育んで来たハウスへの愛情を凝縮した自伝的なアルバムだ。02年のフロア・アンセムとなった、イット・ジャスト・ウォント・ドワ”やレス・トーク・モア・アクション!"といったラテン・フレーヴァーの歌ものハウス・トラックから、セサミ・ストリート風のファニーなコーラス・ラインが楽しい"2クール・4スクール"、彼のアイリッシュ・ルーツを窺わせるU2風の叙情的なナンバー*バトル"に至るまで、ヴァラエティ豊かな楽曲が表現しているのは、本人曰く「26歳の今の等身大の自分そのもの」。どのトラックもとにかく軽快でポップだが、決して安っぽさや下世話さを感じさせない。その絶妙なバランス感覚は、幼い頃からチャート音楽からアンダーグラウンドなハウスまで、分け隔てなく音楽に親しんで来た彼ならではだろう。気のおけない友人達とミラーボールの輝く週末のダンスフロアに足を伸ばす時には、きっとこれ以上ない最高のサウンドトラックになってくれるはず。

BEST TRACKS

  • M3. Less Talk More Action!
  • M5. 2 Kool 4 SKool
  • M6. It Just Wan't Do
  • M8. Battle
  • M13. Choose Something Like A Star

DJとして来日した2002年〈フジ・ロック〉では、ホワイト・ストライブスの“セヴン・ネイション・アーミー”の4分打ちミックスでセットの幕を開け、アンダーワールド“ボーン・スリッピー”で締めるという反則技プレイで、レッドマーキーのオーデイエンスを大いに盛り上げた。2003年2月の単独来日公演時には、CDもアナログ盤も持ち込ます、自身のオリジナル・ナンバーと、自分で編集したオリジナル・リミックス楽曲をラップトップ上で繋いで行くというDJを披露。LFOからマイケル・ジャクソン“ビリー・ジーン”、(またしてもの)“ボーン・スリッピー”に”セヴン・ネイション・アーミー”、そして締めはニルヴアーナ“スメルズ・ライク~”まで回すサービスっぷりで、大いに楽しませてくれました。

192

The kills

Keep on Your Mean Side (Red Meat Heart/キング)
The kills - Keep on Your Mean Side

21世紀に入って始まったロックンロール・リヴァイヴァルの大波は、ポップ・ミュージックにシンプリシティを取り戻し、メロディを取り戻し、そして若さを取り戻した。が、一つだけ、まだ取り逃したままのものがある。それはセックス、妖艶なセクシーさだ。ストロークスも、マンドゥ・ディアオも、ジェットも、キングス・オブ・レオンも、若き乙女を熱狂させるチャームを十分に持ち合わせてはいるけれど、それはセクシーさとは別物。例えばヴェルヴェット・アンダーグラウンドがそうであったように、ロックンロールとセックスはやはり無縁のものではない。そこで登場してくるのが、ザ・キルズだ。一連のガレージ・ムーヴメントの中で登場した2人組ではあるものの、とにかく彼らの生み出す音楽は、エロい。ヴォーカリスト=ヴィヴィと、ホテルの二人の生活を、小さな穴から覗き見てしまったような、濃厚な密室感とエロティシズムがアルバム全体を覆っている。まるで、『仕立て屋の恋』のような作品だ。気怠さと苛立ちを同居させた、ブルージーなギター・リフ。反復を繰り返しながら、段々とヒプノティックな快楽へと続くリズム。ヴィヴィのヴォーカルは、艶かしい吐息と紙一重だ。どこか不愛想な鳴りのサウンドは、しかし耳を済ませば実に先鋭的で、一介のブルーズ/ガレージ・リヴァイヴァルには収まらない、とても現代的な音作りになっている。本人達によれば、このアルバムは、まったく違う音楽的バックボーンを持った二人が、共通言語となる新たな音楽を生み出すまでのドキュメントなのだという。とても濃厚なコミュニケーションの形、つまりそう、このアルバムはセックスそのものだ。

BEST TRACKS

  • M1. Superstition
  • M2. Cat Clow
  • M7. Hitched
  • M10. Fuck the People

「ザ・キルズっていう2ピース・バンドがいるんだけど、とんでもないロックンロール・バンドだよ。まだ若い新人で、男女で歌うデュオでさ。素晴らしいEPを出してるんだ。死ぬほどセクシーなんだよ。まるで『メイン・ストリートのならず者』みたいにセクシ一なんだ!」とは、ボビー・ギレスピーの談。プライマルズは、イギリス・ツアーのオープニング・アクトにキルズを抜擢している。が、なぜかボビー、二人のことを「10代のヤング」と思い込んでました。でも、ホテルってボビーとそんなに変わらないんじゃ……。

196

Missy Elliott

This Is Not a Test! (Elektra / ワーナー)
Missy Elliott - This Is Not a Test!

高域でチキチキカタカタと鳴る金属的な上モノ、そして、低域を支えるぶっといベース。その間の中域にあるのは、声のみ。すべての音を打楽器として扱い、音楽をリズムから組み立ることで生みだされた、空間を活かしたスカスカのサウンドは、実に効果的にビートをシンコペートさせていく──そう、いわゆるチキチキ・ビート。97年の1stシングル“ザ・レイン(スーパ・デューパ・フライ)”以来、ミッシー・エリオットは、希代のトラックメイカー、ティンバランドと共に、R&Bとヒップホップの境界をブチ壊した革新的なサイバー・ファンク・サウンドを作り続けてきた。だが、そうしたイノヴェーションのみならず、コミカルで、開放的なセックス描写によって、性を売り物にしない強い女性のイメージを打ちだし、ギャングスタ同士の抗争をエンタテイメントとして肥大化させてしまったヒップホップに真っ向から警告を発してきた。革新的なイノヴェイターと若者のロールモデルという両面を併せ持つ、理想的なポップ・アーティスト──それが、女帝ミッシーだ。それまでのフューチャリスティックな世界観の集大成的な作品、2001年の3rdアルバム『ミスE…ソー・アディクティヴ』。オールドスクール・ヒップホップへの憧憬と愛情をリプリゼントした、2002年の4thアルバム『アンダー・コンストラクション』。この2枚の傑作を経て、ミッシー&ティンバが作り上げたのが、このアルバムだ。ただ、目が醒めるほど革新的で、それぞれが明確な方向性を持っていた前二作に比べると、どこかその折衷案的な展開という印象も否めなくもない。だが、オールドスクール期のダブルダッチ・ダンスのためのエレクトロ・ビートを、バリ島のケチャを思わせるサウンドで現代的にアップデートさせた“パス・ザ・ダッチ”を筆頭に、その才気は少しも衰えていない。9.11を経験した世界で、親友アリーヤを失ったミッシーは、すべての陰鬱な気分を蹴飛ばすべく、アルバム全体を陽気で、淫らなパーティ・ヴァイブで貫き通している。「これはテストじゃない」というタイトルは、一度きりのライフを懸命に生き抜けという真摯なメッセージだ。今日もミッシーは、ドデカイ尻を振り、ダンスを讃え、セックスを讃え、ハッパを讃え、ユニティを讃え、マスターベーションを讃えながら、シニシズムに陥りがちな世界を激しくロックする。女帝としての面目躍如の1枚。

BEST TRACKS

  • M2. Pass That Dutch
  • M3. Wake Up
  • M6. I'm Really Hot
  • M11. Pump It Up

アリーヤの2ndアルバム『ワン・イン・ア・ミリオン』(96年作品)を出発点にして、ティンバが作り上げていった独特のデジタル・ビート──シンコペーションを効かせた、つんのめるバウンス・ビートには、メインストリームのR&B/ヒップホップのみならず、英国の2ステップ/ガラージ、ベースメント・ジャックスから、世界中のラップトップ・アーティストに至るまで、誰もが嫉妬した。ミレニアム前後のブラック・ポップは、ティンバが牽引したデジタル・ソウルと、エリカ・バデゥやディアンジェロに代表されるオーガニックR&Bとが、人気を二分。そのいずれもが南部から生まれてきたことは、もはやポップ史の常識。

ミレニアム明けの狂騒に翻弄されたかのようにEヴァイブ溢れたダンス・フロアへの急接近を見せた3rdアルバム、『ミスE…ソー・アディクティヴ』は、ミッシーの最高傑作。アメリカのブラック・ポップの現場にエクスタシーが入ってきたことを象徴するかのようなタイトルに、四分打ちのディスコ・ビート。中でも、先行シングル“ゲッチャ・フリーク・オン”は傑作中の傑作。ダンスホール・レゲエ譲りの、輪郭も曖昧なほど膨れ上がった極太キック。タブラ、シタールといったインド音楽の楽器を思わせる、エキゾチックな単音サンプルによるシークエンス。ツンテケテンテンと、世界中が踊った。

4thアルバム『アンダー・コンストラクション』では、随所にスクラッチやシンプルなブレイクビーツを配置し、オールドスクールへの愛情を露に。これも◎。先行シングル“ワーク・イット”では、ビッグ・ダディ・ケイン、パブリック・エネミー、ソルトン・ペッパー、EPMD、ランDMC、KRS-1、ラキムといった名前を挙げ、ジェイ-Zをフィーチャーした“バック・イン・ザ・デイ”では、「ヒップホップが最高だった、あの古き良き時代に何が起こったの?/みんながいた夏のパーティ/誰も銃なんて持ってこなかった」とラップ。これは、ちょっと泣く。

  • 197
    Missy Elliott - Supa Dupa Fly
    Supa Dupa Fly / 1997 / Elektra
  • 198
    Missy Elliott - Miss E...So Addictive
    Miss E...So Addictive / 2001 / Elektra / ワーナー
  • 199
    Missy Elliott - Under Construction
    Under Construction / 2002 / Elektra / ワーナー
202

Peaches

Fatherfucker (XL)
Peaches - Fatherfucker

男があっけらかんとセックスを語るのに対し、歴史上、女がセックスを語るのはタブーとされてきた。それは、音楽の世界においても同様だ。しかし、近年、セックスや行為そのものを少しも臆することなく、表現のテーマに選ぶ女性アーティストが増えてきた。PJハーヴェイ、ビョーク、リズ・フェアといった面々がその代表格だろう。しかし、そんな先達の勇姿も、このピーチズこと、メリル・ニスカーの強烈なインパクトには敵わない。2000年の1st『ザ・ティーチズ・オブ・ピーチズ』の衝撃から4年。この2ndは、エレクトロクラッシュとガレージ・リヴァイヴァルという昨今の音楽シーンにおける二大潮流の、もっとも刺激的な交差点となる作品であり、また双方のムーヴメントにおける起爆剤にもなった。同じくエレクトロクラッシュ・シーンの先端を担うレ・ティグラも、フェミニズムを下地にポリティカルな視点からジェンダーを歌うバンドだが、ピーチズの場合にはずばりセックス──性行為、性癖を大声で歌う。アルバム冒頭に収録された、「ファックしてやらない!」という叫びが延々繰り返される、ジョーン・ジェットの“バット・レプテーション”のサンプルだけでも最高に笑えるが、元祖セックス・アニマル=イギー・ポップの客演を物ともしない、“キック・イット”のヴォーカルの迫力も凄まじい。ガレージ、エレクトロ、ブレイクビーツ、米国オリジナル・パンクをクールに配置するセンスも脱帽もの。全面において、SとMを自在に使い分けるような、緩急とメリハリの効いたテクニックが、見事な全12曲38分。ある意味、本当に女らしく、そして、とてもラディカルな音楽だ。

BEST TRACKS

  • M1. I Don't Give A Fuck
  • M3. IUShe
  • M4. Kick It
  • M7. Rock 'N' Roll
  • M10. Back It Up, Boys

本作のジャケット、ひげ面写真からもわかる通り、彼女はヴィジュアル面でも強烈。特にライヴ・ステージでは、レイヴァン型サングラスに黒ビキニ、マイクロ・ミニで、パンツ全開が基本。HPでは、下から股を撮った写真のみを集めたページもあるので、必見です。毛も見えてます。他にも、股間にチンコの張り型を装着、血へどを吐くなんてパフォーマンスも有り。で、そんな勇姿を観て思い出すのは、ティーンエイジ・ジーザス・アンド・ザ・シャークスを率いていた、NYアンダーグラウンド界の歌姫=リディア・ランチ。性的マイノリティをテーマにした表現活動は、フィストファックのAVに出演したり、ステージでガラスをバリバリ食ったりと、音楽フィールドを軽く越えてます。かなり怖いので進んで聴く必要はないですが、凄いです。

206

Basement Jaxx

Kish, Kash (XL / ソニー)
Basement Jaxx - Kish, Kash

地下深くまで続く長い階段を降りた先にある、真夏の夜のダンスフロア。時折ストロボライトが瞬くだけの薄暗闇の中、汗だくの若者達が自由奔放に身体を揺らしている──そんなホットな空間で、ベースメント・ジャックスは、すべてを“ジャック”する。“ジャック”とは、プラグの挿入口という意味。つまり「繋がる」という意味だ。音や人と繋がるという意味とともに、セクシャルな意味も含んでいる。また、「欺く/巧くやる」というニュアンスもある言葉だ。実際、初期のシカゴ・ハウスには、他のレコードからフレーズを盗用したものが多い。ベースメント・ジャックスが自分達のライヴセットにザ・ジャムの“スタート!”を組み込んだり、“ミラクルズ・キープ・オン・プレイング”で、ジャクソン・シスターズの“ミラクルズ”をサンプリングしたりするのは、そんなシカゴ・ハウスのマナーに基づくものだろう。彼らは、キャリアを通して、汗だくのクラウド達のカラダをジャックするとともに、ラテンやファンク、ラガ、ロックといった、様々なジャンルの音楽を次々とジャックし続けて来た。自身のレーベル〈アトランティック・ジャックス〉からリリースされた、彼らの初期音源を集めたコンピレーション盤、『ア・コンピレーション~』ではラテン・ミュージックを、1stアルバム『レメディ』では、ティンバランドやバスタ・ライムズなどといった、米国のR&Bをジャック。全曲ヴォーカリストをフィーチャーした、踊れる3分間のポップ・ミュージックを詰め込んだ2ndアルバム『ルーティ』では、メインストリームのポップ・チャートをジャック。そして、この3rdアルバムで、ベースメント・ジャックスはパンク・スピリットをジャックしたと言えるだろう。停滞する英国ダンス・ミュージック・シーンへの苛立ちを反映してか、アルバム全体に攻撃的なフィーリングが漂っている。また、“キッシュ・キャッシュ”に至っては、ブッシュ政権を批判したリリックまで披露。とにかく怒りに満ちたアルバムだ。ただ、2ステップ、UKガラージ、ポップス、ハウス、ロック、R&Bからエレクトロクラッシュに至るまで、様々な音楽が運然一体となった本作を、ハウス・ミュージックと呼ぶことはおろか、ダンス・ミュージックと呼ぶことすら不可能かもしれない。いずれにせよ、ベースメント・ジャックスのイノヴェイションが爆発した、2003年最大の問題作だ。

BEST TRACKS

  • M1. Good Luck
  • M4. Lucky Star
  • M10. Cish Cash
  • M12. Hot'n Cold
  • M14. Feels Like Home

このアルバムでのゲスト・ヴォーカルのラインナップには、二つの方向性がある。ひとつは、デトロイトのガレージ・バンド=ベルレイズのリサ・ケカウラや、ゴス・パンクの女王=スージー・スーなど、ロック/パンク界からの顔ぶれ。“ラッキー・スター”で、MCガラージ界の筆頭ラッパー=ディジー・ラスカルを起用したのも、そうした方向性に基づくものだろう。ストリートのリアリティに裏打ちされた、ラフで、タフな彼のMCスタイルには、パンク・スピリットが宿っている。もうひとつは、ミシェル・ンデゲオチェ口の起用に見られる、ソウル/R&Bテイストだ。そもそもリサ・ケカウラは“MC5をバックに歌うティナ・ターナ-”と呼ばれていた人。本作のジャケットに書かれた、「ソウル・パンクス・ユナイト」の言葉は、“ベースメント・ジャックスはパンクをジャックした”という宣言を意味しているとともに、この二つの方向性のことも意味しているに違いない。

ベースメント・ジャックスの二人が最初に夢中になったのは、当時イギリス国内で猛威を奮った初期レイヴ・シーン。例えば、一見かわいく見えるが、よくよく見るとかなり不気味な、『ルーティ』のジャケットの白いゴリラなど、彼らの音楽にあるフリーキーな感覚は、初期レイヴ・シーンとも共通すると言えるかもしれない。

その後,彼らが夢中になったのは、〈ストリクトリー・リズム〉や〈ナーヴァス〉といったレーベルに代表されるNYハウス。中でもマスターズ・アット・ワークは、フェイヴァリットだと語っている。ベースメント・ジャックスが、ハウス・ミュージックと他のジャンルの音楽を混ぜ合わせていくところは、やはり彼らからの影響大。ラテン・ミュージックをルーツに持つルイ・ヴェガと、ヒップホップ・ヘッズのケニー・ドープからなるユニット=マスターズ・アット・ワークも、多様な音楽を混ぜ合わせたハウス・ミュージックが持ち味のユニット。

  • 207
    Basement Jaxx - Atlantic Jaxx Recordings: A Compilation
    Atlantic Jaxx Recordings: A Compilation / 1977 / Atlantic Jaxx
  • 208
    Basement Jaxx - Remedy
    Remedy / 1999 / XL / ソニー
  • 209
    Basement Jaxx - Rooty
    Rooty / 2001 / XL / ソニー
212

RADIOACTIVE MAN

Booby Trap (Rotters Golf Club / ビート)
RADIOACTIVE MAN - Booby Trap

せっかくこのページを開いてもらってるのにホント申し訳ねーんだけど、あんま書くことねーんだわ。ま、俺としては、このレコードで汗だくで踊ってもらえれば、それだけで十分なんだわ──と、思わず、チバユウスケ調になってしまうのは、何故でしょう。本物のロックンロールとそこいらのゴミ・ロックとの差は何かと言えば、腰にくるグルーヴがあるかないか。で、本作のトラックの大半は、かなり腰にくる。そこがサイコーだからなんだわ。レディオアクティヴ・マンは、96年からアンドリュー・ウェザーオールと共に、トゥ・ローン・ソーズメンの一員としても活動してきたキース・テニスウッドのユニット。
2001年の1Stアルバム『レディオアクティヴ・マン』は、ひたすら内側に潜っていくドープなエレクトロだったが、この2ndアルバムは、乱れ打ちされるキックと派手なアシッド・ノイズを基調としたドラムンベース〜ブロークンビートっぽい、かなりハードコアなエレクトロ。むせ返る汗の匂いが伝わってくるような、ごついマシーン・ファンクだ。燃える。オアシスが高級ブランドまみれになってしまっても、ラッド魂を持ったラッドによるラッドのための音楽はある。ダンス・シーン全体がちゃらちゃらした浮ついた気分に覆われてしまった時代にも、90年代初頭のレイヴを思わせるハードコアなサウンドがアンダーグラウンドではずっと生き残ってきたことを証明する1枚だ。打って変わって、モー・ミュージックの看板バンド、ラリ・プナの歌姫ヴァレリ・トレベルジャーがアンニュイな歌声を聴かせてくれる、アルバム最後のエレ・ポップ“フェデックス・トゥ・ミュンヘン”も聴きもの。

BEST TRACKS

  • M3. Bug In Me System
  • M6. Suitybloke
  • M8. Ruby Rage
  • M9. Twistyboomklart
  • M11. Fed-Ex To Munchen

レディオアクティヴ・マンという名前は、そもそもは「シンプソンズ」に出てくるスーパー・ヒーローの名前。普通なら、あの手のキャラクターの名前はすべてコピーライト登録されているので、絶対に使えないと思うんですが、どうなんでしょう。ま、このアルバムのアートワークにも、堂々と『ウルトラQ』のガラモンの写真使っちゃってる人なんで、まあ、要は、皆さんが想像している通りなんだと思います。

本作にゲスト参加しているラリ・フナが属しているモー・ミュージックは、トーマス・モーが主宰するベルリンのエレクトロニカ・レーベル。彼ら以外にも、ムーム、ビョークの『ヴェスパタイン』にも参加したオピエートや、イギリスのアイサン、デンマークのマニュアルなど、個性派揃い。

215
Two Lone Swordsmen - Peppered With Spastic Magic
Peppered With Spastic Magic / 2003 / Rotters Golf Club / ビート

左のディスクは、トゥー・ローン・スウォーズメンのリミクス・ベスト。これまで手掛けた数多くのリミクスの中から硬質なエレクトロを収録。豪華。

217

Muse

Absolution (Mushroom / エイベックス)
Muse - Absolution

人はこの作品を、どんなTPOで聴くのだろう。ウィークデイには職場、あるいは学校に通い、つつがなく一日を過ごし、帰り道にはちょっと寄り道をして買い物なんかしたりして、ウイークエンドには友人や家族とゆっくり過ごしたり、寝てたり──そんな、ごく当たり前の生活を送る人間にとって、このアルバムが似合うシチュエーションというのは、なかなか存在しないのではないだろうか。少なくとも、私が思い浮かぶのは……セックスとか?
人並みのパワーでは発露し得ないほどの激情でかき鳴らされるギターの迫力と威圧感は、まるで映画「スターウォーズ」よろしく「ギター帝国の逆襲」とでも呼びたくなるほど。マシュー・ベラミーの徹底したプレイヤー志向から生まれる長尺のギター・ソロも、おおよそ同世代バンドには他に類をみない。随所に登場する鍵盤は、『戦場のピアニスト』のごとく劇的に、悲哀の音色を奏でる。80年代末、南米やイタリア辺りで盛んだった所謂シンフォニック・メタルを思い出す、クラシックからの影響過多のメロディ。5分の間には、めくるめく曲展開がなされ、3ピース・バンドとは思えない数の音とコーラスが幾重にも交差してゆく──そう、とにかくすべてが過剰なのだ。それは間違いなく、彼らにとって音楽、あるいはロック・ミュージックとは日常のサウンドトラックなどに収まるものではなく、むしろその日常から少しでも遠くへと逸脱するための、実践的手段だということだろう。しかし、何より興味深いのは、彼らはそこに解放感や、幸福感を一切求めてはいないことだ。ここで表現される感情は、混乱や、畏怖、焦燥、喪失感ばかり。前作にあたる2nd『オリジン・オブ・シンメトリー』から、歌詞の内容も「宇宙、宗教、科学、そして俺」という壮大なテーマ設定が顕著となる。つまり、ミューズが求めているのは、人間が人知を超えた存在を目のあたりにした瞬間に体感する、感動、無力さ、焦燥感が一緒くたになった、ある種のマゾヒスティックな快楽なのだ。やはり、これはセックス向けの音楽ということか。しかし、このアルバムを決して嫌いになることが出来ないのは、音楽という名の仰のもとに殉死もいとわないような、問答無用の迫力、全身全霊っぷりにただ圧倒されてしまうから。ロック・ミュージックの意味と可能性を果てしなく肥大化させる、怪物アルバムだ。

BEST TRACKS

  • M2. Apocalypse Please
  • M3. Time Is Running Out
  • M5. Stockholm Syndrome
  • M8. Hysteria

しかし、現在のポップ・シーンにおいて、あまりに独自の世界観を持つ彼らは、実際、友達と呼べるバンドはほとんどいないようだ。取材でも、近いと感じるパンドについて、マシューは「ウィーザーかな」とかなりトンチンカンな答えを。大丈夫か?と言いたくなるが、そのズレっぷりこそ、ミューズが他のバンドと遠くかけ離れた立ち位置にいることの証拠だろう。フレデイ・マーキュリーが生きていれば、誇大妄想狂仲間としてよき相談者、よき友になってくれたのでは。残念。

現在、同業者でもっとも熱心なミューズ奉者と言えば、ザ・ヴァインズのクレイグ・ニコルスか。ライヴのSEでも“ヘイト・ディス・アンド・アイル・ラヴ・ユー”を流したり、ミューズのロゴを手書きした自主製作バンドTシャツも所有。ただ、マシュー的には「彼らのライヴを一度観たことがあるけど、あまりに僕らの音楽とはかけ離れてたからビックリ。もう少し似てるものなのかと予想してた」とか。

現在の彼らのライヴは、仕掛けが盛り沢山。マシューの鍵盤と同期して光るライティングや映像、また、ハイライトでは天井から膨大な数のバルーン(黒のみ)が降ってきたり。

本国でのライヴに足を運ぶファンには、所謂“ゴスっ子”が多数。ただし、日本の名産”ゴスロリ”とは違い、欧米のゴスはオールドスクール。映画『クロウ』や『シザーハンズ』、あるいは『アドア』時代のパンプキンズをイメージしてもらうのが、一番わかりやすいだろうか。欧米におけるゴシックとは、当然、キリスト教的世界に対するアンチ、ダークサイドの表現であり、そこにまつわる背徳感は、日本人の認識とは比べものにならない。米国では、ゴスっ子の子供を持つ母親が、子供の改心を依頼するというTV番組まである。さんざん親子喧嘩をした後、番組の最後に普通の格好に着替えさせられた我が子を見て感涙──という、みのもんた的オチがお約束だ。

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    Muse - Showbiz
    Showbiz / 1999 / Mushroom / エイベックス
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    Muse - Origin of Symmetry
    Origin of Symmetry / 2001 / Mushroom / エイベックス