Chapter 2:

Mellow Yellow

太陽の恵みをいっぱいに浴びた森の木陰で、
このままずっとまどろんでいたくなるほど、うららかな午後。
思わず、都市の喧騒を逃れて、自然の中に逃げ出したくなる。
そんな時には、街のノイズを遮断して、
どこか別の世界に連れていってくれる音楽が聴きたい。
土の匂い、木々のざわめき、潮の香りを運んでくれる、
サニーサイド・サイケデリック音楽の数々。このチャプターでは、
ベッドの中の心地よいまどろみを奪われてしまった後も、
その不思議なサウンドスケープによって素敵な楽園を生み出してくれる、
初夏の避暑地のようなディスクを中心に選んでみた。

James Skelly - The Coral
033

The Coral

Magic and Medicine (Deltasonic / ソニー)
The Coral - Magic and Medicine

このディスク・ガイドが昨年に刊行されていたら、ザ・コーラルの1Stアルバムの内容からすれば、この後にはラヴ、ザ・ラーズ、キャプテン・ビーフハート、ゴーキーズ・ザイコティック・マンキといったバンドの作品が並んでいたに違いない。勿論、ブルー・マグースのような、ロック好きなら誰もが通るだろう傑作コンピ──「ナゲッツ」によって発掘されたサイケデリック・ガレージ・バンド達も外せなかったはす。だが、ザ・コーラルは、この2ndアルバムに至る道程において、世界的なガレージ・リヴァイヴァルの熱狂に一足先に背を向けて、エクストリームなサイケデリック・ガレージから、伝統的なフォーク音楽への回帰を果たした。勿論、英国モダン・ポップの発火点である56年のスキッフル・エクスプロージョンどころか、それ以前のヨーロッパ各国の民族音楽にまで遡ってみせる手腕、そして、海底から引き上げられた海賊船の中から発見された財宝箱のような古くて新しいヴィンテージ・サウンドに変わりはない。だが、以前のアシッドでブッ飛んだ異星人が奏でているかのように感じられた衝撃は、ここではハーディ・ガーディ片手に街から街へ旅する旅芸人の一座のような親密さに取って代わっている。ここでの彼らは、フォークやブルーズのスタイルに則って、伝承文学的な語り口による寓話性を用いて、静かに語りかけようとする。魔女や精霊が暮らすヨーロッパの深い森の奥から聞こえてくるお伽の国の物語。イマジネーションの中にこそ、現実よりもリアルな何かがある──そんなテーゼのお手本のようなアルバム。決して派手ではないが、後年までじっくりと聴き継がれるだろう充実の1枚だ。

BEST TRACKS

  • M2. Don't Think You're the First
  • M3. Liezah
  • M6. Milkwood Blues
  • M7. Bill McCai
  • M10. Pass It On
  • M12. Confessions of A.D.D.D.

ポップ史の中心から遠ざかって久しかったリヴァプールという街に、再び脚光を当て、ザ・ズートンズ、ザ・ベースメントといった後進達に道を開いたという点でも、コーラルの功績は大きい。彼らは、60年代前半はビートルズに代表されるマージー・ビート、80年代初頭はティアドロップ・エクスプローズやエコー&ザ・バニーメンに代表されるネオ・サイケデリック、その後のポストパンク期におけるベイル・ファウンテンズ〜シック、あるいは、90年代初頭の不世出の伝説バンド、ザ・ラーズが生みだしてきたポップの伝統に再び光を照らしたのだ。

本作のナラティヴのヒントは、ヘミングウェイ、イソップ童話、ディランやサイモン&ガーファンクルのようなフォーク・リヴァイヴァリスト達。

037

Prefuse 73

One Word Extinguisher (Warp / ビート)
Prefuse 73 - One Word Extinguisher

アトランタのヒップホップ・シーンを牽引してきたアウトキャストが全米でアルバムを4万枚以上売り、グラミーまで獲得してしまった2003年。この年、アトランタのアンダーグラウンドからは、もう一枚の傑作が生まれている。それが、スコット・ヘレンのブレューズ73名義の2ndアルバムにあたる本作、「ワン・ワード・エクスティングイッシャー」だ。そもそも、スコット・ヘレンは、80年代アトランタの街で、エレクトロ、ヒップホップの黎明期に、スケートボードのリンクに通い詰め、そこでヒップホップに心底魅了されて音楽へと向かった。サヴァス・アンド・サヴァラス、デラローサ・アンド・アソラと、幾つかの別名義でポストロック/エレクトロニカ的な作品をリリースした後、彼は、自らのルーツであるヒップホップに取り組む。そして誕生した2001年の1Stアルバム、「ヴォーカル・スタディーズ・アップロック・ナレーティヴズ」は、当時クロスオーヴァーしつつあったヒップホップとエレクトロニカを融合させた、記念碑的な傑作だ。「声の研究」というタイトル通り、彼は、ズタズタに切り裂いたヴォーカルを、ホワイト・ノイズや数々のサンプリング音源にコラージュした。その手法は「ヴォーカル・チョップ」と命名され、後に星の数程の模倣犯を生むこととなる。だが、スコット自身は、プレフューズが「エレクトロニカ・ヒップホップ」と呼ばれることを極度に嫌った。それは、彼にとって、プレフューズ73が「ヒップホップ」という言葉以外の何物でもないという確があったからだ。もはや企業に商品化されてしまったBボーイ・スタイルを、彼はヒップホップとは呼ばない。彼にとって、ヒップホップとは、あらゆる人種、文化が混ざり合うことで新しい音を生み出してきた、アートフォームの自由さこそを意味している。無論、スペイン系白人と言う出自を持つ彼は、ヒップホップの闊入者であり、アウトサイダーだ。だが、デジタルな質感の1Stからは一転、エディットを最小限に抑え、オールドスクールで、オーガニックな質感のアルバムとなった2ndアルバムの楽曲には、ジャズ、エレクトロニカ、ブラジル音楽、フォーク、ポストロックといった、雑多な音楽的要素が混在している。そこには、「ヒップホップは、もっと自由になれる」──そんな、スコット・ヘレンによる、力強いマニュフェストが込められている。

BEST TRACKS

  • M2. The End of Biters - International
  • M4. Uprock and Invigorate
  • M6. Dave's Bonus Beats
  • M9. Busy Signal
  • M12. Huevos With Jeff and Rani
  • M19. Storm Returns

スコット・ヘレンの周辺人脈はとても幅広く、彼の作品のクレジットを眺めているだけで、アメリカ全土のレフトフィールドなインディペンデント・シーンを一望出来るかのような壮観さだ。1stアルバムでは、盟友MFドゥーム、アンチ・ポップ・コンソーティアムのビーンズといったアンダーグラウンドのヒップホップ・アーティスト達が参加。2ndアルバムには、スコットの敬愛するスケートボーダーであり西海岸アンダーグラウンド・シーンの大御所的存在、トミー・ゲレロの名前も挙がっている。勿論、マイアミに拠点を置く政治的なエレクトロニカ・レーベル、ベータ・ボデガ)周辺や、(チョコレート・インダストリーズ)のコンピ盤「アーバン・リニューアル・ブロジェクト」への参加といった、ベイエリアのエレクトロニカ・シーンとの繋がりも重要だ。また、別名義サヴァス・アンド・サヴァラスの1stアルバムが、シカゴのポストロック・レーベル(ヘフティ)からリリースされていることもあり、1stのゲスト陣に名前を連ねるサム・プレコップを筆頭とするシカゴ音響派との交流も深い。

音の説明だけをしていると、このスコット・ヘレンという青年、とても気難しく堅苦しい人だと思われるかもしれませんが、実はカメラが大の苦手の、温厚&シャイな好青年であり、アメリカ力の政治問題については、一度語り始めると止まらなくなるという熱い一面もある超ナイス・ガイ。別名義の一つ、サヴァス・アンド・サヴァラスでの2ndアルバム、「アプロパット」は、そんな彼が、自分自身のルーツであるスペインへと移住し、カタローニャ地方の民謡や、ブラジルのサイケデリック・フォークなどに触れる中で生まれたレコードだ。こちらのアルバムは、ジョン・マッケンタイア&〈SOMA〉スタジオでレコーディングされ、ドラムスには、プレフューズ73のツアーでもドラマーを務める、トータスのジョン・ヘーンドンが参加している。

  • 038
    Prefuse 73 - Vocal Studies + Uprock Narratives
    Vocal Studies + Uprock Narratives / 2001 / Warp / ビート
  • 039
    Prefuse 73 - Extinguished
    Extinguished / 2003 / Warp / ビート
  • 040
    Prefuse 73 - Savath & Savalas / Apropa
    Savath & Savalas / Apropa / 2004 / Warp / ビート
043

Manitoba

Up in Flames (Leaf)
Manitoba - Up in Flames

大勢の見知らぬ人々達が行き交うスクランブル交差点。そのど真ん中で、突然自分の見ている現実すべてが夢のように思えて、独り呆然と立ち尽くしてしまう──あなたには、そんな経験ってないだろうか? IDM/エレクトロニカの申し子でありトロント大学の博士号を持つ25歳の数学者、マニトバことダン・スナイスの2ndアルバムは、そんな瞬間の記憶がフラッシュバックする、強烈な白昼夢を思わせるサイケデリック・アルバムだ。13歳の内向的な少年が、誰にも使われず放置されていた古いサンプラーを学校から盗み出したことから、マニトバのキャリアはスタートした。『アップ・イン・フレイムス』は、その彼が10数年間に渡って、丹念に拾い集めてきた音の記憶をぎっしり詰め込んだ、玩具箱のような作品だ。アルト・サキソフォン、オルゴール、シタール、バグパイプ、クスクス笑う少年達の声、砕け散るガラスの破片、小鳥達のさえずりサンプルの断片が幾重にも折り重なり、眩い光の溢れるサイケデリックな音の万華鏡の世界へと聴き手を誘う。“ビジュー”はブライアン・ウィルソンのコーラスと、フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドの選逅だし、“ベンドリックス・ウィズ・KO”はママス&パパスへのオマージュだ。“ジャックナゲッティッド”では、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインが召還され、“クレヨン”は、まるでムームがメリーチェインの“テイスト・オブ・キャンディ”をカヴァーしているかのよう。トライバルなドラムとパーカッションが飛び交う最終曲はさながらボアダムスだ。古今東西のアシッド音楽が聴き手を幻惑する、40分間の白昼トリップ・アルバム。

BEST TRACKS

  • M2. Skunks
  • M3. Hendrix With Ko
  • M9. Crayon
  • M10. Every Time She Turns Round It's Her Birthday

アシッドとは、1938年にスイスの化学者、A・ホフマン博士が合成したLSDの通称。43年、好奇心を抱いた博士が摂取し、幻覚作用を発見した。60年代アメリカでは、ハーバード大学教授だったティモシー・リアリーが「感覚のドアを開く」精神拡張のドラッグとして実験を始め、またたく間にヒッピー・ムーヴメントのメイン・ドラッグに。勿論、音楽界でも影響は多大で、「サイケデリック」なるタームを生む。66年、アメリカで非合法化。

無名のカナダ青年マニトバの名前を一躍知らしめたのが、2001年の1st「スタート・ブレイキング・マイ・ハート」。こちらはラップトップで組み立てた端正なエレクトロニカが中心。ボーズ・オブ・カナダをデジタル・エディットで切り刻んだような音が圧巻だ。

047

Individual Orchestra

Music From A View (Revirth)
Individual Orchestra - Music From A View

田中フミヤは、日本のテクノ・シーンの黎明期から活躍し続ける、日本を代表するテクノDJのひとりだ。DJに関して語るとき、彼はよく「DJが曲を選ぶのではなく、客や、その場に曲が選ばれる」という言い方をする。この言葉は、田中フミヤというDJの本質をもっとも的確に言い表している。勿論、「DJとは客に合わせて曲を選ぶ、サーヴィス業だ」ということを意味するのではない。田中フミヤというDJは、音によって、リスナーと音楽の関係性をデザインするアーティストだということだ。彼は、フロアにいるクラウドとスピーカーから出て来る爆音を組み合わせて、「今ここにあるべき、理想の空間」を作り上げる。クリック・ハウス、ヒップホップ、ジャズ、民族音楽、そしてハード・ミニマルーどんなに音楽性が違っても、それだけは変わらない。
田中フミヤはこれまで、いくつもの名義を使い分けてきた。本人名義の作品は、DJツール的なミニマル・テクノを中心にしたもの。カラフト名義の作品は、テクノ/四つ打ちという枠組みにとらわれない、フリーフォームなダンス・ミュージックだ。そして、このインディヴィデュアル・オーケストラ名義。ここでの田中フミヤは、ダンス・ミュージックという制約からも解き放たれている。本作は、5年振りとなる2ndアルバム。「風景を音にしようとした」という本人の言葉通り、田中フミヤは本作で、リスナーとその周りの環境との関わり方をもデザインした。例えば、“Ycj1”はフィールド・レコーディングによる環境音だけで作られた、たった1分の曲。“MUSIC IS VERY BEAUTIFUL IN THE AFTERNOON”は、印象的なピアノの和音が聴こえるのみ。“Untitle -2.58-”は、ピアノやアコースティック・ギター、エレクトリック・ギターの断片的なフレーズだけでしかない。もはや、曲という呼び方が適当かどうかすらわからない。どれもスロー・テンポで、ある意味アンビエント音楽とも言える。だが勿論、ただのBGMではない。例えば、このディスクを海辺へ持っていって聴いてみて欲しい。あるいは、都会の雑踏の中、ヘッドフォンでこのアルバム聴いてみて欲しい。この音楽が、見ている景色とまったく同じものだということに気付くだろう。そう、音楽とはそもそも、こんな風に自然や、環境を表現するものだったのだ──そんなことに気付かせてくれる1枚。

BEST TRACKS

  • M2. Gran Via
  • M5. Sunshine Some Building. Blue Sky
  • M11. Standing Beer
  • M15. 4.April
048
Karafuto - Karafuto Presents Individual Orchestra
Karafuto Presents Individual Orchestra / 1998 / キューン

98年の『KARAFUTO presents INDIVIDUAL ORCHESTRA』は、インディヴィデュアル・オーケストラの1stアルバム。村上ポンタらトップ・ミュージシャンとのセッションを、エディットしたもの。アブストラクトやブレイクビーツからジャズまで、彼の音楽性の幅広さを示した1枚。

049
FUMIYA TANAKA - UNKNOWN POSSIBILITY VOL.2
UNKNOWN POSSIBILITY VOL.2 / 2000 / TOREMA

『UNKNOWN POSSIBILITY VOL.2』(2000年作品)は、本人名義としては2枚目のアルバム。四つ打ちというフォーマットに留まらない、個性的なミニマル・テクノを聴くことが出来る。本誌が2000年のベスト・アルバムに選んで、世間の一部を少しだけ驚かせた。かつて、“ケンカDJ”と呼ばれていた頃の、硬質なファンキー・ハード・ミニマルDJが聴きたい人には、96年の難波ロケッツでのDJを収録した『MIX UP VOL.4』を。

050
FUMIYA TANAKA - FUMIYA TANAKA DJ MIX [1/2] [MIX.SOUND.SPACE]
FUMIYA TANAKA DJ MIX [1/2] [MIX.SOUND.SPACE] / 2002 / ワーナー

2002年の『FUMIYA TANAKA DJ MIX [1/2] [MIX.SOUND.SPACE]』は、リキッドルームや難波ロケッツでのパーティ〈CHAOS〉などでのプレイから、10~30分をピックアップした12セクションで構成されるミックスCD。ただ曲を繋いでいくだけの通常のミックスCDとは一線を画す、画期的なアイデアを持った1枚。「これが“曲の新しいカタチ”」と主張するのは、田中宗一郎。本誌の2002年のベスト・ミックスCD第1位。

051
Karafuto - KARAFUTO DJ MIX 1/2
KARAFUTO DJ MIX 1/2 / 2000 / ワーナー

2000年の『KARAFUTO DJ MIX 1/2』は、エレクトロニカとクリック・ハウスの中間を行く、異形のトラックをミックスした、カラフト名義の真骨頂と言える傑作ミックスCD。

054

Fountains Of Wayne

Welcome Interstate Managers (Virgin / 東芝EMI)
Fountains Of Wayne - Welcome Interstate Managers

携帯電話が登場したことで、10年前と今とでは恋愛の仕方は大きく変化したと思う。昔の漫画によくあった、「彼女の家に電話したら、親父さんが出て慌てて切っちゃった」なんてことも無くなったし、約束の時間に間に合わずにすれ違うなんてことも無くなった。お互いが言葉を交わすのに、時間も環境も何一つ障害となるものは、今や存在しない。そう考えると、ちょっと寂しい気もするのは私だけだろうか?会うことの出来ないもどかしさ、次に交わす言葉を空想する楽しさと寂しさ──そんなものも、人にとってはとても大切なもののはずだから。そして、彼らファウンテンズ・オブ・ウェイン(以下、FOW)は、その切なくも愛しい日々をモチーフに物語を紡ぐ、現在のポップ・シーンでは最上級のストーリーテラーだ。本作でも、登場する主人公達は、同級生の母親に叶わぬ思いを寄せたり、いつまでたってもコーヒーのお代わりを運んでこない場末のウェイトレスを眺めながら、遠く別れた妻への未練を呟いていたりする。コンピュータ画面の前で自我喪失し、気絶寸前のセールスマン、スター街道を駆け上がる幼なじみを今だ故郷で待ち続ける青年もいる。その鮮やかな情景と感情描写は、16のショート・ストーリーが収められたオムニバス映画のようだ。
1stアルバム『ファウンテンズ・オブ・ウェイン』、2ndアルバム『ユートピア・パークウェイ』は共に、ギター・ポップ史に残る金字塔的作品。比べる対象はビートルズくらいしか思い浮かばない、ビタースウィートなメロディ。厚みのあるコーラス。何の変哲もないパワー・コード主体のストロークだけで、絶妙なメロディをバック・アップする堅実なギター・ワーク。バンド・サウンドだからこそのダイナミズム──FOWは、90年代後半以降において、そのすべてを兼ね備えた唯一の王道ギター・ポップ・バンドだ。しかし、本作での彼らは、そんなギター・ポップの枠すら飛び越えている。メロウなアコースティック・ナンバー、カントリー・ウエスタン、80年代を思わせるAORまで、さらりと演ってみせるソングライター/プレイヤーとしての懐の深さには、ため息が出るばかり。その充実ぶりは、たった1時間で“ポップス"の世界を一周するかのよう。そして、そこには必ず誰もが記憶の中にしまっている思い出の場所や、愛すべき人達の姿があるはず。愛しさと切なさを確認する、そんな時間の為の一枚だ。

BEST TRACKS

  • M1. Mexican Wine
  • M2. Bright Future in Sales
  • M3. Stacy's Mom
  • M9. Hey Julie
  • M13. Peace and Love
  • M14. Bought for a Song

このバンドのキーパーソン、クリス・コリンウッドほど、頑固で偏屈、そしてウィットに富んだ人物も珍しい。ことに音楽に関しては、「世の中に出回っている95%のものはゴミだと思ってる」と公言するほど。これまでに、彼が気に入っていると公言したのは、ビートルズ、「モダン・カントリーではない」カントリー・ミュージック、フレーミング・リップス、ベン・リー、ロン・セクスミスくらいか?リアル・タイムのポップ・ミュージックには、まったくと言っていいほど興味なし。2003年の時点で、「ホワイト・ストライプスもストロークスも聴いたことがない」と言い切る強者。方や、相方のアダム・シュレンジャーは、米国ボップ・シーンの人脈図の中心に立つような人物。FOWの他に、タヒチ80のプロデューサー等でも知られるアンデイ・チェイス、フランス出身の女性ヴオーカリスト=ドミニク・ドゥランドとの3ピース・ユニット、アイヴィとしての活動もすでに10年に渡る。客演仕事もジゴロ・アンツ、ジェームス・イハ、スウォール360等々多数。また、イハとアンディとはインディ・レーベル〈SCRATCHIE〉も主催している。加えて、忘れてはならないのが、サウンドトラック職人としての手腕。その数は片手では足りないが、トム・ハンクス監替主演の「すべてをあなたに」では、ゴールデングローブ最優秀主題歌にノミネートされた経歴も。

クリス&アダムのコンビに、注目が集まりがちなFOW。でも、ドラムのブライアン・ヤングはポウジーズ出身。ケン・ストリングフェロウとは、現在も複数のバンドを結成、不定期な活動を続けている。ギターのジョディ・ポーターは、90年代初頭の、The Belltowerなるドリーム・ポップ・バンド出身。ハウス・オブ・ラブのテリー・ビッカーズをプロデュースに迎えたシングルは、英国「NME」のシングル・オブ・ザ・ウィークに選出されたことも。ちなみに、96年頃、このバンドにもアダムはベーシストとして参加してます。

  • 055
    Fountains Of Wayne - Fountains Of Wayne
    Fountains Of Wayne / 1996 / Atlamtic / ワーナー
  • 056
    Fountains Of Wayne - Utopia Parkway
    Utopia Parkway / 1999 / Atlamtic / ワーナー
061

Sugar Ray

In the Pursuit of Leisure (Atlantic /ワーナーミュージック)
Sugar Ray - In the Pursuit of Leisure

あなたがイメージする「夢のような人生」とは、どんなものだろう?華やかでゴージャスな成り上がり人生か。それとも、金や名声はなくとも、愛する家族と過ごす慎ましやかな人生だろうか。自らの仕事に命をかけて、ある日突然過労でポックリ、なんていうのが理想だという人もいるかもしれない。でも、このシュガー・レイというバンドが命をかけて体現しようとしてるものこそ、もしかしたら極上の人生なんじゃないだろうか?このアルバムは、「アメリカ西海岸のビーチで暮らすこと」だけを描いている。照りつける太陽、真っ白な砂浜、心地よい波の音、ビーチ・バラソルの下でたわわに揺れる美女達のポイン、夜な夜なクラブで仲間達と飲み交わすジン&トニックーそんな極上のリゾート・ライフにおける極楽浄土のヴァイヴは、他のロック・バンド達とは明らかに一線を画すシュガー・レイのオリジンな魅力だ。その独自のユルユル・パーテイ・サウンドを確立するきっかけになったのが、97年の2ndアルバム「フロアード」からのスマッシュ・ヒット“フライ”における、「ユルいブレイク・ビーツ+アコースティック・サウンド+カリビアン・テイストのメロディ」というスタイルの発見。本作は、そのスタイルをさらに洗練させた、究極の形と言えるだろう。随所に配置されたオーケストレーションも、大仰さとは無縁。ひたすら緩やかで、慎ましやかにゴージャス(?)。それがまた、絶妙の浮世離れ感を醸し出している。それにしても、かつては悪がきミクスチャー・バンドだったくせに、もはやアグレッシヴなロック・チューンが1曲も存在しないのは凄い。しかも、全曲、とにかくユルい。唯一の例外は、馴染みのバーテンダーに、「ま、人生なんて何とかなるもんだ」と歌ってるだけ、というお気楽さがあまりに彼ららしいシングル“ミスター・バーテンダー(イッツ・ソー・イージー)”くらいか。自己表現というエゴを一切介在させずに、「あなたに素敵な音楽を届けます」ということだけをモットーにする、その潔さ。このレコードを、この人達は果たして必死こいて作ったんでしょうか?それとも、ユルユルで作ったんでしょうか?ユルく生きることとは、すなわち、しなやかに生きること。そのためには汗して働け──そんな、古き良きアメリカン・ドリームを今に蘇らせる、永遠のヴァケーション・アルバムだ。

BEST TRACKS

  • M1. Chasin' You Around
  • M5. Mr. Bartender (It's So Easy)
  • M6. Can't Start
  • M9. Whatever We Are
  • M12. Blues From A Gun

彼らのうち、DJホミサイドを除く4人は、オレンジ・カウンティの出身。1stアルバム「レモネード・アンド・ブラウニーズ」がリリースされた95年は、サードウェイヴ・スカ・ムーヴメント後期。その発源の街の出身であるが故に、彼らもそのシーンに属することに。まあ、今、聴き直すと、それほどスカとは関係のないアルバム。当時の彼らの印象は、「スカ・パンク勢の末っ子パンド」といった感じ。

もう少し時代を遡ること、92年。友達の家のバーティで大騒ぎするためだけに、シュガー・レイは結成された。時は、所謂LAメタルやハード・ロックのカヴァーが中心。ただ、十代の頃から、モッズ・シーンに顔を出してみたり、パンク・キッズを気取ってみたり、はたまたサイコビリーになってみたり、とあらゆるシーンに顔を出しまくっていたマークの浮気っぽさそのままに、「騒げる音楽なら何でも」カヴァ一するバーティ・バンドだったとか。

参考までに。2ndアルバム「フロアード」の邦題は、「シュガー・レイのアメリカン・ドリーム '97~爆走街道まっしぐら、俺らに勝る敵はナシ!!」。凄すぎ。

それにしても見事なのは、フロントマン=マーク・マッガラスの胸板の厚さ。全身鍛え抜かれた肉体美と、甘いマスクは、ボーイズ・グループならともかく、オルタナティヴなミュージック・シーンで肩を並べる者はいないはす。実際、アメリカの有名女性誌での「芸能界のいい男アンケート」で、唯一トップ50入りしたロック・ミュージシャンだった、という経歴も。また、モデル、俳優としての活動経歴もあり。ロビン・ウィリアムズとビリー・クリスタル共演の映画「ファーザーズ・デイ」、アメリカの人気カートゥーン「スクービー・ドゥー」の劇場版では、バンドが演奏してるシーンを見ることが出来ます。マークの台詞も、数秒分あったり。ただし、そのどちらもコメディ映画というのは、彼らのキャラクターゆえなのか?

  • 062
    Sugar Ray - Floored
    Floored / 1997 / Atlamtic / ワーナー
  • 063
    Sugar Ray - 14:59
    14:59 / 1999 / Atlamtic / ワーナー
066

Kings of Leon

Youth & Young Manhood (RCA / BMGファンハウス)
Kings of Leon - Youth & Young Manhood

ドント・トラスト・オーヴァー・サーティーヒッピー・ムーヴメント華やかなりし60年代に生まれたこの言葉は、明日のことなんて気にしちゃいない、俺達若者にぴったりな言葉だ。そして、このキングス・オブ・レオンのデビュー・アルバムに、ぴったり当てはまる言葉でもある。そう、「少年期と青年期」というアルバム・タイトルが物語っている通り、本作には、若さと豪快さが詰まっている。米国南部、テネシー州はナッシュヴィル出身のキングス・オブ・レオン。カントリーの聖地から現れたこともあり、彼らの音楽は、CCRやザ・バンドといった、サザン・ロック・バンドの名前を思い起こさせる。アルバムには、2曲の緩やかなカントリー・ナンバーもあるには、ある。だが、ほぼ全ての曲が、3分前後で、瞬間最大風速50メートル級の激走ナンバー。つんのめりまくりな前ノリのビートに、さらに突っ込み気味にペラベラな音のギターが絡む。それはまるで、ダムドがニール・ヤングをカヴァーしているかのよう。彼らはテクニックも、ややこしいコード進行も必要としない。たかだか、三つだか四つだかのコードと、ドでかい音の鳴るアンプさえあればそれでいい。そもそも、レコード契約が決まってから、ほぼ素人だった4人が集まり、バンドを結成。それから約1ヵ月ほどで1stEPをレコーディングしたという逸話からして、この連中に、マトモなミュージシャンになる気があったどうかすら怪しい。されど、さすがは平均年齢21歳!! これこそまさに、新しい世代による、新しい世代のためのロックンロールだ。あまりに無鉄砲で、最高に痛快なロックンロール・アルバム。疲れるね、こりゃ。

BEST TRACKS

  • M1. Red Mornig Light
  • M3. Wasted Time
  • M6. California Waiting
  • M8. Molly's Chambers

キングス・オブ・レオンとジェットは、かなりのダンス・ミュージック嫌いで有名だ。実際、撮影の時にジェットのメンバーは、“Disco Sucks”と書かれたTシャツを着ていた。それを見たキングス・オブ・レオンのケイレブ・フォロウィルは、「後で盗んで帰るうか」と言ったとか。

ペンタコステ派キリスト教の室教師を父に持つ、キングス・オブ・レオンのフォロウィル兄弟。その暮らしは、幼い頃からアメリカ各地を布教してまわる旅の連続だったという。実際、移動に継ぐ移動のハードな生活だったらしい。彼らの音楽から、カントリーやブルーズといった、アメリカ南部に土着の音楽からの影響が感じられるのは、そんな少年時代の生活のためだろう。